人間が生き変わり死に変わりという、いわゆる輪廻転生を繰り返しているとすれば、前世といってもひとつだけとは限らず、いくつもあることになる。
また、たとえば自分のたましいがひとつだけという考え方自体も正しいのかどうかわからず、アメーバか何かではないが、同じグループに属するたましいが、ときに分裂したり、ときに合体したりしながら、この輪廻転生を繰り返しているという可能性だったある。
そうしたなかで、どうも今生が日本人だったから、前世も日本人だとも限らず、前世は逆にヨーロッパかどこか、日本とはかなり別な地域の、別な時代の住人だったということもあるはずだ。
そしてときどき、そうした前世に触れるようなものを今生で見聞きしたりすると、わけもなく感動して涙が出てきたりということがある。
アメリカのファイザー社は世界的な医薬品メーカーとして有名だが、この会社はもともとはドイツから移民してきたファイザーという人、正確にいえば2人のいとこ同士で立ち上げた会社で、医薬品というよりも、化学薬品のメーカーというべきものだった。
見知らぬ土地からの移民なので、さまざまな苦労はあったと思うが、ヨーロッパから輸入した柑橘類を原料にクエン酸を生成するなどして、まずは大ヒットで成功を収めたのではなかったかと思う。
その後、アオカビからペニシリンが発見されるに及んで、ファイザー社は生産設備のかなりの割合をペニシリン製造にまわし、当時第二次世界大戦で傷ついた兵士たちの救命にあたったという歴史がある。
なぜ自分とは(少なくとも現世では)かかわりのない、ファイザー創業者の話を調べていたのかはわからないが、このとき無性に涙が出て止まらなかった。
なんだかんだいっても、おとなになってからこんなに大泣きするのは、以前に前世療法を受けたとき以来の経験で、前世かなにかでひょっとしたらかかわりが深かったのかもしれない。