世の中にはその人が外出するときには必ず天気が晴れになるという、晴れ男、晴れ女というものがいるらしい。
むかし、ある修験の山で普通にハイキングをしていたところ、風雨に加えて霧がすごく、何でこんな日に来てしまったのだろうというくらい疲労困憊したことがあった。
事前情報では、その日はスピリチュアル界隈ではそれなりに知られた女性が同じ山で登山をすることになっていたので、とりあえず遠目にでも見ておこうかと思って、登ってくるであろう時間までは我慢していた。
すると、その女性が来るちょうどその時間帯だけ、なぜか風雨はやみ、霧もなくなって、陽の光まで差し込んできた。
修験の山だから女人禁制で、女性が登ったらえらい目にでも遭うのかといえばそうではなく、晴れのパワーのほうがまさったようだ。
もっとも、この山は大峰などとは違って、半分ほどは観光地化されているので、あまり女人禁制は関係なかったのかもしれないが。
いずれにせよ、あのときは晴れ女の威力というのはこれほどまでにすごいのかと驚愕したが、別に本人が気象制御の術でも修法したのかといえばそうではなく、勝手に天気のほうが変わってくれるという便利なものらしい。
今はもう無くなってしまったようだが、私もかつては客寄せの能力を持っていた。
私がどこかのお店に入店すると、どんなに寂れていてもなぜか後続のお客がわらわらと寄ってくるという能力で、店の人にとってはありがたいかもしれないが、自分自身としては、会計が混雑したり、ゆっくり品物を選べなかったりするので、たいへん迷惑な能力だ。
そんな能力なら、自分で事業でも興せばさぞや人気店になってもうかるだうと思えばそうでもなく、自分が企画をして自分が取り仕切るイベントなどに限って、まったくこの能力は発現されず、閑古鳥が鳴いてしまう。
もっぱら他人のためだけに発現し、自分自身には何のメリットもないという点でも、かなり特異で、逆に自分のなかに他人に対する嫉妬心を掻き立てるだけという、使いどころのない能力だった。