ブライアン・ワイスという人が『前世療法』という書物を書いていて、それにはさまざまな人の、実にさまざまな前世の体験が記してある。
人間の意識の力によって、年齢的に過去にさかのぼって、さまざまな果たせなかったことがら、トラウマになっていることがらを再体験、再解釈して、明日をより豊かに生きる術として、「退行催眠」とよばれるものがある。
通常は子供の頃に親に無視されたとか、まあそうした子供らしいトラウマの除去に用いて「生きにくさ」を払拭するのが趣旨なのだが、実はどこまでも年齢をさかのぼって、生まれる前の前世にまで催眠状態のままであればさかのぼることもできるのだ。
これがいわゆる「前世催眠」であり、通常の意識状態では知ることができなかったさまざまなことが明らかになる場合がある。
私もこの「前世療法」の催眠を受けたことがあり、いくつかの前世なるものが浮かび上がったが、そのなかのひとつに、江戸時代前期あたりと思われる百姓甚兵衛というのがあった。
実はこの前世のことはフルネームでわかっていて、実在したそれっぽい人もいるのだが、確証も何もないので伏せておこう。
この人物は岩木山の見える津軽半島に住んでいて、厳しい父親に育てられ、名主か何かとして村を背負っていたようだが、あるとき例外で稲の実りがなく、遠くの村にあるお寺か何かに代参に行ったらしい。
その代参で旅をしているシーンや、大きな地蔵菩薩の石像の前で必死で拝んでいるシーンなどは見ることができたが、それがなんというお寺であったのかまではよくわからなかった。
その後御利益もなかったらしく、稲はあいかわらず実らず、車座になって村人と一揆の相談をしているところに、村でただ一人だけ役人に捕縛され、田舎道を引きづられた挙句に、砂浜のようなところで刑を受けて生涯を終えたらしい。
これが人嫌いのような性格形成に、悪い意味で一役買ってしまったということなのだろうが、体験としてはなかなか興味深いものだった。
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