予知の難しさ

予知、予言というものは、なかなかそれを役立てることが難しいものだが、別にパラレルワールドのような概念を出さなくても、時間、時刻といった部分での特定ができなかったり、予言した事実がもたらす波及効果が常識では判断できなかったりという、かなりシンプルな点での限界があるという理由によるところが大きいともいえる。

たとえば、トランプ大統領が誕生するかもしれないといったことは、すでにその事実が成就する以前から、ツイッターなどでは予知している人もいたように思う。

これにはさまざまな方法があるだろうが、西洋占星術であれば、トランプのプログレスした太陽がちょうど物事の始まりを示すアセンダントとコンジャンクションになっているなどどいったいくつかの根拠をもって、社会的な地位の獲得、すなわち大統領になるだろうことを予想することが可能なわけだ。

あるいは、波動感覚のようなもので、クリントンに比べてトランプのほうがエネルギーに満ちあふれている感覚が強烈にあったということで、トランプ大統領の誕生を知り得たということもあったかもしれない。

さらに本題の、第三の目でビジョンとして、彼が大統領の宣誓をしていたり、パレードで手を振っているいる場面を見たなどといったことも、やはりあるかもしれないわけだ。

それでは、トランプが大統領になるビジョンを見たとして、これを何か金儲けに活用できないかと考えたとする。

少なくとも新聞やテレビの報道のなかでは、大統領選以前、あるいは大統領選挙中にも、トランプは単なる泡沫候補で、本命のクリントンを横目に、所属政党の共和党の不甲斐なさのために何故か成り上がってしまった程度に捉えられていたはずだ。

そうなると、泡沫候補のトランプが間違って大統領になってしまった場合、世界の経済にも大きく混乱がもたらされるというのは、誰しも考えることだろう。

FXでもやっているならば、トランプ大統領誕生のビジョンが見えた瞬間に、ドル円を売っておけば、その後大統領としてトランプが当選すれば、安定した日本円が買われて超円高になる、すなわちドル円は大暴落することがほぼ確定となるのだから、莫大な為替差益が得られると考えるのが当然だ。

ところが、為替相場の推移を見ると、大統領選挙のときはたしかに1ドル101円近くまで大暴落したが、その後急速に反転して、短期間でついに1ドル118円まで大暴騰してしまった。

ということは、ビジョンを信じて円高の方向に賭けてしまったら、逆に大々的な円安、ドル円大暴騰で莫大な損害を被ってしまうということになり、結局予知などしなければよかったという話になってしまう。

それでは逆に、トランプ大統領誕生そのものではなく、トランプによって円安になる、という結果のほうのピジョンが予知できていれば、その予知の内容を生かすことができるのかといえは、これも実は難しそうであるといえる。

たしかに「トランプ相場」といわれる118円台までのドル円大暴騰があったのは事実だが、その前の11月9日の14時頃にドル円は一時101.15円というプライスを付けている。

これが何を意味するのかといえば、円安に賭けて事前にドル円を買ったとしたら、いくらその後に高騰したとしても、101円台の下落に耐えられず、たぶんその時点で破産していただろうということである。

したがって、もしも予知するのであれば、何月何日の何時という、時間的な条件がないと、判断を誤ってしまう可能性が高いということだ。

先ほどの例でいうと、11月9日14時に1ドル101.15円だった為替相場は、実は11月10日6時、要するに終値では105.65円にまで高騰しているので、何時に高騰するという時間の情報さえあれば、その間は含み損でも耐えていれば破産しなくて済んだかもしれないことになる。

もっと極端な例をいえば、1月1日10時に友達と初詣を楽しんでいた人が、10時1分に老人が運転する暴走車両に突っ込まれて交通事故で死亡したという場合、「初詣」のほうのビジョンを見たとしても、「交通事故」のビジョンが見えなければ、楽しそうだと思って絶対に初詣に行くはずなので、わずか1分の差でも誤差の範囲などとはまったく言えないということになる。

第三の目に映るビジョンというのは一瞬で、どこかの時刻における固定された視点からの風景を切り取ったものになっているため、この時刻を正確に特定するということがなかなか難しい。

そのため、たしかにビジョンは現実になって、予知は成就したといえたとしても、それがいったい何の意味をもつのか、人生にはすこしも役立たないという結果になってしまうこともあるわけだ。