人を神に祀るというのは珍しいことではない。八幡神は応神天皇だし、天神といえば菅原道真、東照大権現は徳川家康、近くは靖国神社だってそうだろう。
明治時代には別格官幣社として、こうした「人を神に祀る」系統の神社が先祖返りで多くつくられたし、内国勧業博覧会の記念としてつくられた平安神宮のようなものもある。
実はこの手の神社というのは、なんというか、神社っぽさがないというか、神が降臨する雰囲気がよく感じられない場合もあるのだが、山口県萩市の松陰神社などは、例外的で興味深い神社かもしれない。
もうNHKなぞどこの国の放送局だかわからなくなって以来私は見てはいないが、ひょっとしたら今年は大河ドラマの「花燃ゆ」などでも松陰神社が有名になっていることだろう。
山陰地方を車で旅行しているときに、私もこの松陰神社はぜひ参拝したいと思っていたが、途中でかなり寄り道したので、日没までに到着するのは客観的に見て難しい感じになってしまった。
ところが、実際にはぎりぎり日が沈むまでに参拝でき、境内にある「松下村塾」なども、逆に他の観光客がいない分だけしっかり拝観できたので、なかなか思い出深い神社だ。
この神社の拝殿では、他の神社に参拝するときにはちょっと感じられない「ねぎらい」の雰囲気を強く感じたので、実は吉田松陰という人は、世の中で言われている以上に人格者で、かなり門弟から慕われていたのではないかと思う。